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鉄道駅から出た三人を迎えたのは高く真上に上った誇らしげな太陽と、往来を埋め尽くす人だかりだった。 周囲はすべて人間ばかりで、地面の色がみえないくらいだ。その数の人間が歌ったり、踊ったり、酒を飲んだりと騒いでいる上、本来警備に当たるべき衛兵までもが浮かれてあちらこちらで女性を口説いているのだから、それはもはや無法地帯といっていいほどの賑わいだった。 そんな様子を見て目を細めたロゼの横で、シャルナークとシズクが感嘆の声を上げる。 「すごい人…!」 「そういえば、今の時期って皇帝の聖誕祭だったわね。すっかり忘れてた」 「え、今日王様のお誕生日なの?」 「正確には明日。一週間ずっとお祭りなのよ。今日は前夜祭ね…って、ちょっと」 道に沿って開かれた様々な種類の屋台へと、シズクが無言で駆け寄っていこうとしたのを、は腕を掴んで制した。シズクは不満そうな視線を向けてくるが、こんな人ごみの中ではぐれたら、まず見つけるのは不可能だ。シズクの方はもちろんこちらのことなどおかまいなしだろうし、本来なら頼りになる衛兵たちですら今日ばかりは役に立ちそうにない。 「まずはホテルに行くんじゃなかったの」 「だって、」 「だってじゃなくて。こんな所ではぐれたらひとたまりもないでしょ」 「えーでも…」 シズクはなおも食い下がらない。は助けを求めるようにもう一人の連れの方に視線を泳がせたが、何が面白いのやら、シャルナークはにやにやと二人の様子を眺めるばかりだった。 「…ちょっとは助けてよ」 じとっとした目でみれば、ようやく加勢に加わった。 やれやれと長いためいきを吐いたところで、やはり一筋縄ではいかない奴らである。気づけば、「とりあえずホテルにチェックインして荷物を置いたら、三人で街に繰り出そう!」という結論に落ち着いていた。もちろんの意見は却下、というよりは黙殺であった。精一杯の恨みを込めて「わたしは行かないわよ」と言えば、さも当然のように「え、なんで?!案内してよ」などとのたまう。 「私たちこの国はじめてなんだよ」 「わたしだって住んでたわけじゃないし」 「えー、でも俺たちよりは知ってるだろ?」 「でも…合流しなくてもいいの?命令通りに動かなくていいの?」 シャルナークは声を上げて笑った。 「命令なんてないよ。今夜ホテルクレルモンフェランに集まろうってだけ。全然問題ないよ」 「…全然わからないわ。あなたたちって何者なの。クロロはあなたたちの親玉なんでしょう。なのに全員適当で…まったく理解できないわ」 もちろん理解する気もないけれども、と続けたの傍らで、シャルナークは少しだけ考えたようだった。いかにもはじめて疑問にもったという様子だった。 「団長は団長だし、そりゃ命令だってすることはあるけど…」 「けど?」 「とりあえず、が考えてるような集団じゃないってことは言えるかな」 は自然と眉をひそめていた。今度は彼女が考える番だった。 シャルナークは無造作に彼女の肩を叩いた。それはよく仲間同士労うときに行われる仕草だったが、単独行動を主としていたはそんなこと知る由もない。体を強張らせ、弾かれたようにシャルナークを仰ぎ見たが、彼はなにも気にせずにすたすたと数歩先を行っている。彼女はそのあまりの気兼ねなさと遠慮のなさに、ただただ目を見開くばかりであった。 to be continued... |