若造と女、という組み合わせが気に食わなかったのだろう。男たちは立ち上がろうともせずにじろりとこちらを一瞥した。テーブルの上では食べかけのパスタが湯気をたてている。

「なんだ、お前ら」
「言われなくてもわかっているでしょうに」
「そのアタッシュケースを大人しく渡しなさい」
「へえ、パッショーネってのは色仕掛け以外のとこでも女を使うんだな」
「兼用かもしれないぜ?ああ、よく見たらそっちの小僧もキレイな顔してんだな」
「あいつ、なんていったっけ・・・ああそうだ、ブチャラティだ。あのガキもスキモノだねぇ」

 げらげらと下品な声をあげて笑いだす。わたしはソファに体を滑り込ませ、男の腕に手をからめた。

「そうよ。わたしたち、身体をつかってるの。なんならおじさんも味わってみる?」

 身体をおしつける。そしてそのまま一気に力を加えた。
 あらぬ方向に曲がった腕、食器の散乱するテーブルに勢いよく突っ込んだハゲ頭。大量の血を噴出しながら、その男はもんどりうって床を転がり始めた。てめえ、と言って椅子から立ち上がり飛び掛ってくるもう片方に身体の向きを合わせ、腕を突き出そうとしたところで、男の身体が大きく横に反れた。そのままド派手な音を響かせて、食器やらインテリアやらを巻き込みながら壁に激突する。

さん、まったく、あなたって人は」

 倒れた男をすでに見てすらいないフーゴは、いかにも呆れかえった表情で肩をすくめていた。

「あれほど穏便にすませろとブチャラティに言われていたのに」

 男の側頭部を強打したばかりの右手をこれ見よがしにさすりながら、良識人ぶってフーゴは言う。すでにレストランは喧騒に包まれつつあった。視界の端で支配人らしき男が受話器をとっている。

「でも、わたしが先に手を出していなくても、フーゴが出していたでしょう」

 なんのことですか、とフーゴはにこりと笑う。ほんの一瞬だが、わたし以上に彼が殺気を放ったのを確かに見ていた。わたしたちに向けられた言葉はなんら問題ではない。汚名ならすでにお互い慣れっこだ。もしも彼らがスタンド使いであったなら、ブチャラティを侮辱した瞬間、わたしたちの背後に現れた影たちに気づけたに違いない。
 まったく、と笑い混じりのため息をつく。

「一緒にブチャラティに叱られましょうか」
「そうね」

 足元に転がる男たちをちらとみて、わたしは思いっきり微笑んだ。

「ね?身体を使うのってシンプルだけど、とっても効くでしょう」